ひとり親家庭は住宅ローンを借りられる?注意点についても解説

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ひとり親家庭(母子・父子家庭)で住宅の購入を検討している方の中には、住宅ローンを借りられるか不安な方もいるでしょう。ひとり親家庭が住宅ローンを借りることは可能です。ただし、住宅ローンを借りるには金融機関の審査に通る必要があり、慎重な検討が欠かせません。

本記事では、ひとり親家庭が住宅ローンを借りる際のポイントや、住宅ローンを借りる際の注意点、住宅の選び方などについて解説します。

シングルマザーやシングルファザーといったひとり親家庭(母子・父子家庭)が住宅ローンを組むことは十分に可能です。

住宅ローンの審査では、主に収入や勤続年数、年齢、健康状態、ほかの借入状況、物件の評価額などが考慮されます。家族構成なども返済能力を把握するための情報として参考にされることがあります。

返済能力や収入の安定性に問題がないと判断され、金融機関が定めた基準を満たしていれば、融資を受けられる可能性があります。

住宅ローンの審査基準は金融機関ごとに異なりますが、多くの金融機関が融資を行う際に考慮している共通の項目はあります。国土交通省が公表している「令和6年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」によると、90%以上の金融機関が「融資を行う際に考慮する項目」として、以下の項目を挙げています。

  • 完済時年齢
  • 健康状態
  • 借入時年齢
  • 年収
  • 勤続年数
  • 返済負担率
  • 担保評価(物件の評価額)
  • 金融機関の営業エリア

参照:国土交通省「令和6年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」

なお、同調査結果においては、融資を行う際に考慮する項目として「家族構成」などを挙げている金融機関もありますが、これらの点だけが重視されているわけではありません。そのほかの項目も含めて総合的に審査が行われます。

住宅ローンの借入額が決まる目安の1つに「返済負担率」があります。返済負担率とは、世帯年収に対してローンの年間返済額が占める割合を示したものです。国土交通省の「令和6年度住宅市場動向調査報告書」によると、住宅ローンがある世帯の、住宅の種別ごとの年間返済額と、世帯年収に占める返済負担率の平均は以下のとおりです。

住宅の種別年間返済額返済負担率
注文住宅144万8,000円18.4%
分譲戸建住宅132万1,000円17.6%
分譲集合住宅126万5,000円16.1%
既存(中古)戸建住宅109万3,000円16.3%
既存(中古)集合住宅114万円17.8%
リフォーム住宅73万7,000円12.7%

参照:国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書」

返済負担率が最も高いのは注文住宅で18.4%、最も低いのはリフォーム住宅で12.7%です。

なお、住宅ローンを組む際には、一般的に年収300~400万円程度は必要になると認識しておくとよいでしょう。ただし、年収が300~400万円程度あれば必ず住宅ローンが組めるというわけではありません。先述のとおり、年収以外の要素も考慮されることをきちんと理解しておきましょう。

ひとり親家庭(母子・父子家庭)が住宅ローンを組む際は、以下の4つのポイントを押さえて検討することをおすすめします。

  • 自己資金を用意する
  • 自分に合った住宅ローンを選ぶ
  • ほかのローンを整理する
  • 団信への加入について確認する

これらのポイントが大切なのは、必ずしもひとり親家庭に限ったことではありませんが、留意することで住宅ローンに関する不安を軽減できるでしょう。

ひとり親家庭が住宅ローンを組む際は、自己資金(頭金)を準備して借入額そのものを減らすことが大きなポイントになります。住宅ローンの審査では返済負担率が考慮され、金融機関の基準内に収まっているかどうかが融資の可否に関わるためです。

一般的に、自己資金は住宅購入価格の2割程度が目安とされています。たとえば、3,000万円の住宅を購入する場合、自己資金を600万円準備できれば、借入額は2,400万円におさえられるのです。

借入額が少ないほど、毎月の返済負担が軽くなるだけでなく、金融機関側のリスクも低下します。

住宅ローンの審査に通過するには金融機関の定める基準を満たす必要があるため、自身に適した商品を選ぶことが大切です。

金融機関によって、住宅ローンの審査基準は異なります。審査では、年齢や年収、家族構成、雇用形態、返済負担率、担保評価などの観点から総合的に判断されます。

ひとり親家庭が住宅ローンを申し込むにあたって、現在利用しているほかのローンがある場合は、完済するか、できるだけ残高を減らしておくことをおすすめします。ほかの借入れがあると返済負担率が高くなり、家計への負担が重くなる可能性があります。

主に以下のような借入れ、支払いに注意しましょう。

  • カードローン
  • クレジットカードのリボ払い
  • スマホの分割払い
  • マイカーローン
  • 教育ローン
  • 奨学金

これらの利用がある場合は、住宅ローンを申し込む前にできるだけ返済を進めておきましょう。

住宅ローンを組む際は団体信用生命保険(団信)の保障内容なども確認しましょう。団信とは、住宅ローンの返済中に契約者が死亡または高度障がい状態になった場合に、保険金が金融機関に支払われ、その保険金でローン残高が完済される仕組みの保険です。その結果、家族はローンの返済を続けることなく、いままで通り自宅に住み続けられます。

ほとんどの金融機関では、住宅ローンの契約時に団信への加入が必須となっています。住宅ローンを申し込むときは、死亡だけでなく病気などのためにローンの返済が難しくなる可能性も考えておかなければなりません。ひとり親家庭で住宅ローンを組む際は、契約者の万が一に備えて、加入する団信の種類や保障内容をよく検討しましょう。

なお、金融機関によって取り扱っている団信の種類や保障内容が異なるため、事前に確認することが大切です。

団信の仕組みや種類についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

住宅を購入する際は、子どもへの配慮も必要です。ひとり親家庭(母子・父子家庭)が住宅を購入する際は、次の2つのポイントを忘れずに検討しましょう。

  • 子育てしやすい住環境かどうか
  • ライフスタイルの変化に対応できるかどうか

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

住宅を取得する際は、子育てに適した環境かどうかを十分に確認することが大切です。たとえば、次のような点に注意して選ぶとよいでしょう。

  • 保育園や学校が近い
  • 病院やスーパーが近い
  • 公園や児童館などがある
  • 勤務先に近い
  • 治安がよい

しかし、こういった条件をすべて満たしている物件はなかなか見つけにくく、見つかったとしても高額な場合があります。譲れない条件を決めたうえで、複数の物件を比較して検討しましょう。

住宅の購入は大きな買い物です。将来後悔しないように、ライフスタイルの変化に対応しやすい物件を選ぶという考え方もあります。いまは子どもが小さくても、いずれは独立し、それほど大きな家が必要なくなることも考えられます。また、今後もし家が不要になった場合は、売却するという選択肢も生まれるでしょう。

将来の生活を予測するのは難しいことですが、ライフスタイルの変化に対応しやすい住宅かどうかを判断材料の1つにするのもおすすめです。

住宅を取得すると、取得時に登録免許税や印紙税が、取得後は毎年、固定資産税や都市計画税などの税金がかかるのが一般的です。
ひとり親家庭(母子・父子家庭)が受けられる税制優遇制度として、「ひとり親控除」と「寡婦控除」が挙げられます。

【ひとり親控除】
ひとり親控除とは、申告する年の12月31日時点で婚姻をしていないか、配偶者の生死が明らかでない方のうち、以下の3つの要件をすべて満たした場合に適用される制度です。

  • 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
  • 生計を一にする子どもがいる
  • 合計所得金額が500万円以下

要件に該当する場合、35万円の所得控除を受けられます。詳細は国税庁の案内をご確認ください。

参照:国税庁「No.1171 ひとり親控除」

【寡婦控除】
寡婦控除とは、ひとり親に該当せず、以下のいずれかの条件に当てはまる場合に適用される制度です。

  • 夫と離婚したあと婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下
  • 夫と死別したあと婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下

要件を満たしている方は、27万円の所得控除を受けられます。こちらも、詳細は国税庁の案内をご確認ください。

参照:国税庁「No.1170 寡婦控除」

児童扶養手当と住宅ローンは基本的に併用が可能です。住宅を取得すること自体が、児童扶養手当の支給停止や減額につながるわけではありません。

ただし、住宅を購入したことで親などと同居し、世帯全体の所得が増える場合には注意が必要です。児童扶養手当は世帯の所得に応じて支給額が決まるため、所得が所得制限額を超えると手当が減額または支給停止になる可能性があります。 また、住宅ローンの審査においては、原則として児童扶養手当を収入の一部とみなすことはできませんが、家計全体の状況を確認するうえでの補足的な要素として考慮されることがあります。

ひとり親家庭は住宅ローンを借りられる

ひとり親家庭(母子・父子家庭)が金融機関の定めた条件を満たせば住宅ローンを組むことは可能です。審査では完済時年齢や年収などのほか、返済負担率も確認されるため、自己資金の準備や、ほかの借入れを整理しておくことが住宅ローンを借りるためのポイントになります。

物件を選ぶ際は希望条件を優先しすぎず、無理のない返済計画を立てられる価格帯の住宅を選ぶことをおすすめします。

住宅の購入を検討している方は、まずは信用金庫などの金融機関に相談のうえ、最適なプランを考えていきましょう。信用金庫の住宅ローンは、地域密着型の強みを活かしたサポートやアフターフォローが強みです。住宅ローンに不安がある方でも、安心して購入の検討に進めるでしょう。

執筆 木内菜穂子

金融機関や税理士事務所での勤務を経て、現在は金融・保険ライターとして執筆活動を行う。主に公的年金制度や社会保障制度、生命保険、NISAなどの情報を発信中。難しいお金の話を分かりやすく伝えることをモットーとする。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、一種外務員資格、年金アドバイザーの資格を保有。

監修 水野崇

CFP/1級FP技能士。東京理科大学卒業。中学、高校、大学、専門学校で金融経済教育を行うほか、テレビ朝日、BSテレ東、TOKYO MXの番組に出演。NHKドラマ「3000万」家計監修。「水野総合FP事務所」代表として、相談、執筆・監修、講演・講師、取材協力、メディア出演など幅広く活動している。
【URL】https://mizunotakashi.com/

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