しんきんマネーコラム
団信ってなに?仕組みや種類をくわしく解説

団信ってなに?仕組みや種類をくわしく解説

団信(団体信用生命保険)は、住宅ローン返済中に契約者に万が一のことがあった場合にも、家族にローンの返済負担をかけずに家を残すことができる保険です。そんな団信には、近年さまざまな種類が登場して、選択肢が増えていることをご存じでしょうか。今回は、団信の基本的な仕組みや種類、団信選びのポイントについてくわしく解説していきます。

住宅ローンの団信ってなに?

住宅ローンを申し込むと加入手続きをすることになる「団信」は、万が一の際に住宅ローンの返済が免除される生命保険のことを言います。そもそも団信とはどんなものなのかを解説します。

団信とは「団体信用生命保険」のこと

団信とは、住宅ローン契約時に付帯して加入する生命保険のことで、正式名称を「団体信用生命保険」といいます。住宅ローン返済中に契約者が死亡・高度障害状態になった場合、団信に加入していると、住宅ローンの返済が不要になり、家族はそのまま自宅に住み続けることができます。

団信の仕組み

団信は、契約者と金融機関、保険会社の3者間で成り立っています。住宅ローン契約者は、住宅ローンの申し込みと合わせて、団信への加入申し込みをします。

住宅ローン契約が無事に成立すると、契約者は金融機関に対して毎月のローン返済を行い、金融機関から保険会社に対して団信保険料の支払いが始まります。契約者は別途団信保険料を負担する必要はありません。

返済中に契約者が死亡した場合や重大な障害を負った際には、保険会社が契約者やその家族に代わって残債を支払う仕組みのため、契約者の家族に経済的負担がかかることはありません。住宅ローンが完済された状態で自宅を引き継げるため、家族は返済を気にすることなく自宅に住み続けられます。

金融機関側としても、団信があることで契約者に万が一のことがあっても住宅ローンが完済されるため、安心して融資できることになります。

団体信用生命保険(団信)の仕組み

団信と生命保険の違いとは?

団信と生命保険では大きく3つの違いがあり、契約者、受取人、保障期間が異なります。

(1)契約者が違う
団信の場合、契約者は金融機関です。金融機関が保険会社に対して保険料を支払います。一方、生命保険の場合には、被保険者である個人が契約者となり、保険会社に対して保険料を支払います。

(2)受取人が違う
団信の場合、保険金の受取人は金融機関です。住宅ローン契約者が死亡した場合や重大な障害を負った際には、保険会社が契約者やその家族に代わって住宅ローンの残債を払う仕組みです。そのため、団信では個人が直接現金を受け取ることはありません。
一方、生命保険の場合には、被保険者が亡くなると、あらかじめ指定した受取人が保険金を受け取ります。

(3)保障期間が違う
団信の場合、住宅ローンの借入期間が保障期間になります。例えば、住宅ローンを35年返済にした場合、当初の保障期間は35年になります。ただし、返済途中で繰り上げ返済をして住宅ローンの返済期間が縮まると、その分、保障期間も短くなります。返済が終わってから保障が続くことはありません。一方、生命保険の場合、契約時に決めた保険期間中は、解約しない限りずっと保障が続きます。

団信加入の条件

住宅ローンとセットで利用する団信ですが、誰もが必ず利用できるわけではありません。利用にあたっての条件を確認しておきましょう。

住宅ローンの契約時

団信は、住宅ローンの新規借り入れや、借り換え時に、ローンと同時に申し込みます。一度契約した内容を後から変更することはできませんし、住宅ローンに後から付加することや、返済の途中で別の団信に乗り換えることもできません。

健康状態など所定の条件を満たす必要がある

団信ごとに年齢などの条件が決まっているため、そうした条件を満たす必要があります。さらに、団信にも一般的な生命保険と同じように健康状態の告知があります。健康状態によっては団信の審査が通らずに、住宅ローンが利用できない場合があります。

加入できなかった場合はどうする?

団信に加入できなければ、団信への加入が必須となっている住宅ローンは利用できません。「フラット35」など一部のローンでは団信への加入が必須ではないものもありますが、契約者に万が一のことがあった場合には家族に負担を残すことになります。

持病などが理由で、一般的な団信(以下、「一般団信」という)に加入できないという場合には、「ワイド団信」という選択肢もあります。ワイド団信は、「引受条件緩和型団信」のことを言います。一般団信よりも、健康状態の審査基準が緩く、持病がある人でも加入しやすくなっています。ワイド団信を利用する場合、保険料負担として住宅ローン金利が0.3%程度上乗せされます。また、死亡・高度障害については保障されますが、がん団信や三大疾病保障付きなどの疾病保障がついたものは選べません。

団信の主な種類

団信には、一般団信のほかにも、いくつかの種類が用意されています。保障内容と上乗せ金利などに注目して選ぶようにしましょう。

一般団信

一般団信では、住宅ローン契約者が死亡した場合や、所定の高度障害状態になった場合に、ローンの返済が免除されます。住宅ローン金利に追加して保険料を負担する必要はありません。

がん団信

がん団信の場合、住宅ローン契約者が死亡・高度障害状態になった場合に加えて、がん(悪性新生物)と診断された場合にも住宅ローン返済が免除されます。がんと診断された状態で保障の対象となるため、住宅ローンの返済を気にすることなくがんの治療に専念しやすくなります。がんの診断では、がんのステージなどは問われませんが、多くの場合、上皮内新生物は対象外となります。がん団信によりローンが完済された後、治療によってがんが回復した場合も、再び返済する必要はありません。

がん団信を選ぶ場合、住宅ローン金利が0.2%程度上乗せになる場合が多くなっています。
なお、上乗せとなる金利の条件や、保障内容や保障範囲の詳細については、金融機関や保険会社によって異なるため、事前によく確認してください。

三大疾病保障付き団信

三大疾病保障付き団信の三大疾病とは、がん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中を指します。これらは日本人の死因の上位を占める三大疾病であり、療養期間が長期化しやすく経済的な負担が重くなりやすい病気です。死亡・高度障害に加えて三大疾病で所定の状態になった場合に、住宅ローン返済が免除されることになります。

がんの場合には、がんと診断されると保障の対象となりますが、急性心筋梗塞と脳卒中は、60日以上就労制限があるなど、保険会社所定の条件を満たした場合に、はじめて支払い対象となることが多くなっています。

このほか、さらに保障の範囲を広げた「七大疾病保障付き団信」「八大疾病保障付き団信」の付いた住宅ローンを取り扱っている金融機関もあります。 いずれの場合も、住宅ローン金利に0.3%程度の金利が上乗せになることが多くなっています。また、がんの保障が付くことから、加入可能年齢が一般団信よりも制限されていることがあります。詳しい保障内容や支払い条件、上乗せ金利など詳細を確認して選びましょう。

その他の団信

疾病保障が付いた団信のほかにも、「夫婦連生団信」や「ぺアローン団信」があります。利用する場合には、夫婦の両方が年齢や健康状態などの加入条件を満たしている必要があり、夫婦双方が同じ条件で加入することになっています。

夫婦連生団信は、連帯債務型の住宅ローンを利用している場合が対象になります。夫婦で1つの住宅ローンを返済している場合に、どちらか一方が死亡もしくは高度障害状態になるとローンの支払いが免除になる団信です。一般団信は加入する際、どちらか一人もしくは夫婦の間で付保割合の設定があります。夫婦どちらかに万が一のことがあった場合、団信の付保割合に応じて債務が残り、ローンの返済が続くため、夫婦連生団信は、有効な選択肢となるでしょう。ただし、保障を上乗せすることになるため、通常の住宅ローン金利に、0.2%程度の金利を上乗せして返済することになります。

ペアローン団信は、1つの物件を共に所有する夫婦や親子などが、それぞれの持ち分に対してローンを組む「ペアローン」の利用者が対象になります。ペアローンにも一般団信はつきますが、その場合、死亡・高度障害状態になった方のローンは免除されるものの、もう一方のローン返済は残ります。ところが、住宅ローン契約時にペアローン団信を選んでおけば、ローンを契約する二人のうちどちらかが死亡した段階で、夫婦もしくは親子それぞれのローン返済が免除されます。

団信の選び方

ここまで団信について解説してきましたが、どのような視点で団信を選べばいいのでしょうか。団信選びのポイントについて解説します。

自分にとっていい条件の住宅ローンを選ぶ

団信には様々な種類がありますが、一般団信で十分なのであれば、住宅ローンの金利や借入のしやすさなど、自分にとって条件のいい住宅ローンを選ぶことを優先しましょう。住宅ローンは長い期間をかけて返済していくものですから、わずかな金利差に見えても返済総額で見ると大きな違いにつながります。

上乗せされた金利を含めて選ぶ

一般団信ではなく、がんや三大疾病の保障が付いた団信、夫婦連生やペアローンの団信などを希望する場合は、細部の条件にも注目して選ぶようにしましょう。例えば同じ三大疾病保障付きの団信でも、加入できる年齢や保障の細かな条件が異なる場合があります。金融機関によって上乗せ金利も異なるため、上乗せされた金利も含めて選ぶようにしましょう。

団信で保障が十分でない場合には、民間の保険で保障を上乗せする

この順番で選んでいくと、希望する住宅ローンに希望する種類の団信がない場合もあるでしょう。例えば、八大疾病保障付きの団信やペアローン団信を取り扱う金融機関はそれほど多くありません。その場合には、選択可能な範囲で団信を選んでおいて、希望する保障を民間の生命保険で補えばよいでしょう。

まとめ

団信は、住宅ローン返済中に契約者に万が一のことがあった場合に備える保険です。一般団信の場合、団信保険料の支払いは不要ですが、ワイド団信、がんや三大疾病保障、夫婦連生型などを選ぶと、その分上乗せ金利として保険料を支払うことになります。どこまでのリスクに備えたいか、上乗せ金利と保障の条件を細かく比較して選びましょう。

執筆 氏家祥美

ハートマネー代表。遊びゴコロあるライフプランを共に作るファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。「お金・いきがい・つながり・健康」のバランスが取れた100年人生をサポートする。2005年から中立な立場で講演・執筆・相談業務を行うほか、金融リテラシーの普及にも務める。

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