しんきんマネーコラム

大学の入学金納付に奨学金は間に合わない?入学前に資金を準備する方法を解説

子どもが大学の入学試験に合格するのは喜ばしいことですが、入学金や授業料の支払いに不安を感じる方もいるのではないでしょうか。奨学金を利用すればよいと考える方もいるかもしれませんが、奨学金の振り込みは入学後に始まるため、入学金などの準備に間に合わないケースがあります。

本記事では、奨学金の振り込み前に生じる入学金などの費用の準備方法について、具体的な選択肢や利用する際の注意点を解説します。

入学金の納付に奨学金は間に合わない

奨学金が振り込まれるのは入学後であり、入学前に支払いが必要な入学金には間に合わないケースが多いでしょう。 入学金が準備できない場合は、奨学金以外の方法を検討しなければなりません。この場合は、国の教育ローンや民間の教育ローンなどを利用することになります。具体的な方法については、後ほど詳しく解説します。

大学入学時に必要な費用

大学に入学するにあたって必要な費用として、主に以下のものが挙げられます。

  • 入学金
  • 授業料・施設設備費など
  • 教材購入費
  • 引っ越し・一人暮らし費用
  • その他費用

入学金以外にもさまざまな費用がかかり、一時的にまとまった資金が必要になることがわかります。なお、大学の学費や一人暮らしにかかる費用については、以下の記事もあわせて参考にしてください。
関連記事:「大学の学費はどれくらいかかる?国立・公立・私立別にかかる費用を紹介|ここしん
関連記事:「大学生の一人暮らしにかかる費用はどのくらい?足りない場合の対策も解説!|ここしん

入学金

大学の入学金は、国立か私立かによって異なり、学部によっても異なります。それぞれの目安は以下のとおりです。

大学(学部)入学料
国立大学28万2,000円
私立大学(文科系学部)22万3,867円
私立大学(理科系学部)23万4,756円
私立大学(医歯系学部)107万7,425円

参照:e-Gov 法令検索「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(平成十六年文部科学省令第十六号)」
参照:文部科学省「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」

国立大学の入学金は、省令で28万2,000円と定められています。私立大学の場合は大学・学部によって異なり、文系や理系では23万円前後ですが、医歯系学部の場合は100万円以上かかることがあります。

授業料・施設設備費など

入学時に支払う費用として、授業料・施設設備費などもあります。金額の目安は以下のとおりです。

大学(学部)授業料施設設備費
国立大学53万5,800円
私立大学(文科系学部)82万7,135円14万3,838円
私立大学(理科系学部)116万2,738円13万2,956円
私立大学(医歯系学部)286万3,713円88万566円

参照:e-Gov 法令検索「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(平成十六年文部科学省令第十六号)」
参照:文部科学省「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」

大学の初年度納付金には入学金のほかに授業料や施設設備費などがあり、そのうち入学金と前期の授業料・施設設備費を、入学手続きと並行して大学が指定する日までに納めるケースが多いです。そのため、入学時には初年度納付金のおよそ6〜7割を準備しておく必要があります。

一般的に、入学手続きは合格発表から1〜2週間以内に行いますが、大学や選抜方法によって異なる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。なお、後期分の授業料や施設設備費などは初年度の秋に支払うパターンもあります。

2年目以降の授業料・施設設備費も同様に、前期は4月ごろ、後期は9〜10月ごろに納付することが多くなります。

教材購入費

大学では、教科書や参考書などの教材や、授業・研究に必要なパソコンなどの費用もかかります。教材にかかる費用の目安は以下のとおりです。

大学(学部)教科書・教材・パソコン費用
国公立大学24万2,600円
私立大学(文科系学部)18万5,800円
私立大学(理工系学部)22万4,400円
私立大学(医歯薬系学部)24万2,800円

参照:全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)「「2025年度保護者に聞く新入生調査」概要報告」

教科書や参考書は、授業ごとに指定されるものを購入する必要があります。1冊あたり数千円するものも多く、履修科目数が多くなるほど高額になります。専攻分野によっては、専門書や辞書、問題集などを追加で購入する場合もあるでしょう。

また、レポート作成やゼミでの発表準備、オンライン授業にはパソコンが欠かせません。大学で必要とされるパソコンは10万円前後の価格であることが多く、プリンターなどの周辺機器やソフトウェアのライセンス料なども支払うと、さらに高額な費用が必要になります。

引っ越し・一人暮らし費用

大学への進学を機に一人暮らしを始める場合は、引っ越し費用や家電や家具など、一人暮らしの準備費用がかかります。費用は住むエリアやライフスタイルなどにより異なりますが、以下の金額が目安となります。

費目金額
入居※・引越費用22万7,500円
生活用品購入費用20万9,100円

※入居費用には、契約金や前家賃などを含む

参照:全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)「「2025年度保護者に聞く新入生調査」概要報告」

一人暮らしをするには、入居・引っ越しに約23万円、生活用品の購入に約21万円が必要になっていることから、およそ40万円以上の費用がかかると認識しておきましょう。これら以外にも、部屋を探す際に必要な交通費や宿泊費なども発生することがあります。準備に必要な予算として見積もっておきましょう。

その他費用

大学入学前には、ここまでご紹介した以外の費用が発生することもあります。主な費用は以下のとおりです。

  • 受験料
  • 受験時の交通費・宿泊費
  • 通学のための交通費

大学の入学試験を受けるには、出願したうえで受験料を払い込む必要があります。試験会場が遠方の場合は、交通費や宿泊費もかかることを忘れてはいけません。 また、大学に通学する際に交通機関を利用する場合は、定期券などを入学時に購入することが多いです。通学に電車などを利用しない場合でも、自転車や車を購入することがあるかもしれません。

奨学金以外で入学金を準備する方法5選

奨学金以外で入学金を準備する方法として、次の5つがあります。

  • 国の教育ローン
  • 金融機関の教育ローン
  • 入学時必要資金融資
  • 教育支援資金(生活福祉資金貸付制度)
  • 入学資金融資あっせん制度

最適な借り入れ方法を選べるよう、それぞれの方法について確認していきましょう。

国の教育ローン

国の教育ローンとは、正式名称を「教育一般貸付」といい、日本政策金融公庫が取り扱っている公的な融資制度です。家庭が負担する教育費を軽減し、子どもの教育の機会均等などに貢献することを目的としています。

項目内容
対象となる学校の例高等学校高等専門学校大学大学院短期大学専修学校
用途の例学校納付金受験費用住居費用教科書代通学費用
借入限度額子ども1人につき上限350万円まで ※1
金利年3.15%(固定金利)※2 
申し込み条件・対象者融資対象の学校に入学または在学する子どもの保護者で、一定の世帯年収(所得)条件を満たす方 ※3

※1 一定の要件に該当する場合は子ども1人につき上限450万円まで
※2 2025年9月1日時点
※3 扶養している子どもの人数により世帯年収の上限額が異なる

国の教育ローンは入学金や授業料のほか、通学費やパソコンの購入費などに利用できます。なお、日本学生支援機構の奨学金との併用が可能です。

参照:日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」

金融機関の教育ローン

信用金庫や銀行などの金融機関で取り扱っている教育ローンを利用するのも手段の1つです。国の教育ローンと比較して、次のようなメリットがあります。

  • 申し込み条件に年収制限がない
  • 借入限度額が高めな傾向がある
  • 借り入れまでの期間が短い

金融機関の教育ローンには、申し込み条件に年収(所得)による制限がなく、利用できる方の範囲が広いという特徴や、借入限度額が高めで高額な費用にも対応しやすいというメリットがあります。また、国の教育ローンに比べて借り入れまでにかかる期間が短い傾向がある点もメリットです。入学前の申し込みや借り入れが可能なため、入学金や引っ越し費用にも充てられます。

ただし、借入限度額や金利などは金融機関によって異なるため、確認が必要です。

金融機関の教育ローンには「証書貸付タイプ」と「カードローンタイプ」があります。証書貸付タイプは、契約時に必要な資金を一括で借り入れ、毎月借入金と利息を返済していく商品です。追加で借り入れする場合は、再度審査を受ける必要があります。

一方、カードローンタイプは契約時に決められた借入限度額の範囲内であれば、何度でも繰り返し借り入れできる商品です。ただし、証書貸付タイプより金利が高めとなる傾向があります。

「証書貸付タイプ」と「カードローンタイプ」の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:「お子さんの進学・在学資金をサポートしてくれる教育ローンの賢い使い方|ここしん

入学時必要資金融資

入学時必要資金融資は、労働金庫(ろうきん)が取り扱っている融資制度です。利用対象者は奨学金の振り込みを労働金庫に指定するなど、一定の要件を満たす必要があります。また、入学時に進学先に支払う教育資金のための融資制度なので、利用目的は入学金や授業料といった進学先に支払うものに限定されます。

参照:全国労働金庫協会(ろうきん)「令和7年度奨学生採用候補者の皆さまへ 入学時必要資金融資のご案内」

教育支援資金(生活福祉資金貸付制度)

生活福祉資金貸付制度の1つである教育支援資金の「就学支度費」は、低所得者世帯の子どもが、高校や大学などへ入学する際に必要な費用を借りられる制度です。

項目内容
対象となる学校・用途高等学校、大学または高等専門学校へ入学する際に必要な経費
借入限度額50万円
金利無利子
主な申し込み条件・対象者世帯の収入が所定の金額以内の方

教育支援資金の「就学支度費」の借入限度額は50万円で、未払いのものに限られます。また、無利子での借り入れが可能で、保証人も不要(ただし世帯内で連帯借受人が必要)です。

詳細は、お住まいの地域の社会福祉協議会に問い合わせてみてください。

参照:都道府県社会福祉協議会「(資料13)入学前支援について」
参照:社会福祉法人東京都社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度 教育支援資金のご案内」

入学資金融資あっせん制度

各自治体で行われている「入学資金融資あっせん制度」は、子どもが進学する際の入学資金の納付を支援するため、特定の金融機関からの融資をあっせんする制度です。利用対象者や融資条件などは自治体により異なります。

ただし、この制度はあくまでもあっせんです。実際に利用するためには、金融機関の審査を通過する必要があります。一般的に、居住要件や所得要件、あっせん先の金融機関の融資条件を満たしていることなどが求められます。詳細については、お住まいの自治体に確認しましょう。

入学金は奨学金では支払えないので教育ローンなどを検討しよう

入学金や前期授業料は、大学合格発表後すぐに納付を求められることが多いです。奨学金の振り込みは入学後になるため、入学金の納付に充てることは難しいでしょう。

このタイムラグを把握したうえで、奨学金以外に入学金を準備する方法を検討することが大切です。国の教育ローンや信用金庫や銀行等が取り扱っている教育ローンなどの内容を比較し、家庭に適した方法で入学金の用意を進めていきましょう。

執筆 木内菜穂子

金融機関や税理士事務所での勤務を経て、現在は金融・保険ライターとして執筆活動を行う。主に公的年金制度や社会保障制度、生命保険、NISAなどの情報を発信中。難しいお金の話を分かりやすく伝えることをモットーとする。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、一種外務員資格、年金アドバイザーの資格を保有。

監修 桜井鉄郎

FP兼金融・不動産ライター 東証プライム上場の金融機関で住宅ローンの相談販売を担当(相談件数:約2,000件)。最適な返済プランや返済開始後のライフプランをFPの視点で顧客に提案。マイホーム購入に関連する法令・税額控除制度等も解説。
<保有資格>FP1級、行政書士、宅地建物取引士、証券外務員1種ほか

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