「子どもの教育費は総額でいくらかかるのだろう?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。進学ルートによって差があるものの、教育費は総額で1,000万円以上かかることも少なくありません。
この記事では、子どもにかかる教育費の目安や教育費に活用できる補助制度を解説していきます。
目次
子どもの教育費にはどんなものがある?
教育費とは、大まかに言うと、一人の子供を教育して、社会に出るまでにかかる通園、通学に必要な費用のことを指します。
学校の授業料やそれに付随する費用のほか、学習塾や習い事に関しても、間接的に学校教育とつながりがあるため、教育費に含めるのが一般的です。
文部科学省によると、教育費は次の3つの項目にわけることができます。[注1]
定義 | 具体例 | |
学校教育費 | 学校教育のために、学校が一律に徴収する経費などの総額 | 入学金・授業料教科書・教材費制服や通学用品費クラブ活動や学級活動費 |
学校給食費 | 幼稚園・小学校・中学校において給食費として徴収した支出 | 完全給食・捕食給食・ミルク給食など形態を問わない |
学校外活動費 | 予習・復習・補習など学校教育に関係する学習のための補助学習費の総額 | 学習机やパソコン、参考書など家庭教師や学習塾費 |
心と体を豊かにするための習い事など、上記以外の学校外活動費の総額 | キャンプなどの野外活動やボランティア活動などの体験活動費用ピアノ・芸術鑑賞などの芸術文化活動水泳・体操などのスポーツ活動費用習字やそろばんなどの教養のための費用 |
未就学児にかかる費用と補助制度
未就学児にかかる費用の目安と活用できる補助制度について解説していきます。
未就学児にかかる費用
文部科学省の調査によると、未就学児にかかる年間の教育費は次のとおりです。[注1]
学校種別 | 学校教育費 | 学校給食費 | 学校外活動費 | 合計(年額) |
公立幼稚園 | 6.1万円 | 1.3万円 | 9.1万円 | 16.5万円 |
私立幼稚園 | 13.5万円 | 3.0万円 | 14.4万円 | 30.9万円 |
公立幼稚園と私立幼稚園では通園にかかる費用の違いだけではなく、習い事や体験にかける学校外活動費にも差があります。私立幼稚園に通う子どものほうが、学習塾や習い事などにかける費用が多いようです。
また、保育園では、「認可保育園」、「認可外保育園」、「認定こども園」など、種類や自治体によって保育料金は異なります。国の政策により、幼稚園、保育園、認定こども園等の無償化が開始され、現在では満3歳になった後の4月1日から小学校入学前までの3年間の保育料が原則無償化されています(0~2歳児クラスの場合、住民税非課税世帯のみ無償化)。0~2歳児においては親の収入に応じて保育料が異なり、認可保育園の費用は月額0円から約8万円と幅広く、保護者の所得条件により大きく異なります。平均は約3万円とされていますが、すべての人が同じ保育料というわけではありません。
また、最近では自治体独自に0歳から就学前まで所得制限なしで完全に無償という、子育て世帯に優しい自治体も増えつつあるようです。
幼児教育・保育の無償化
子育てを行う家庭の経済的負担の軽減を図るため、2019年10月1日から「幼児教育の無償化」がスタートしました。 簡単に言うと幼稚園と保育園が無料(条件付き)になり、住民税の非課税世帯は0~2歳児も保育料がかからないという制度です。[注2]
利用する施設や子どもの年齢等によって、「無償の内容」が異なります。例えば、幼稚園や認可外保育施設等については無償となる月額利用料に上限があり、それを超えた分は自己負担となります。また、満3歳未満の子どもが保育園を利用する場合、住民税非課税世帯でないなら、無償の対象にはなりません(ただし、利用状況等によって第2子は半額、第3子は無償)。
また、見落としがちな点として、無償となる「利用料」には原則、通園送迎費、食材料費、行事費等は含まれていませんので注意が必要です。
子供の年齢や世帯収入、また具体的に利用を考えている施設によって異なるため、事前によく調べておきましょう。
対象施設 | 無償化の内容 |
幼稚園、認可保育所、認定こども園等 | 3〜5歳児クラス:毎月の利用料が無償。ただし、幼稚園は月額2万5,700円が上限(入園初年度は毎月の利用料に入園料の月割額を加算) 0〜2歳児クラス:住民税非課税世帯を対象に、毎月の利用料が無償 |
認可外保育施設等 | 3〜5歳児クラス:月額3万7,000円まで利用料が無償 0〜2歳児クラス:住民税非課税世帯を対象に、月額4万2,000円を上限に利用料が無償 |
幼稚園の預かり保育 | 3〜5歳児クラス:幼稚園の利用に加え、利用日数に応じて最大月額1万1,300円まで無償 |
就学前の障害児の発達支援施設 | 満3歳以降の4月1日から小学校入学までの3年間毎月の利用料が無償 |
小・中学生にかかる費用と補助制度
小・中学生にかかる費用の目安と活用できる補助制度について解説していきます。
小・中学生にかかる費用
文部科学省の調査によると、塾や習い事も含めた小・中学生にかかる年間の教育費は次のとおりです。[注1]
学校種別 | 学校教育費 | 学校給食費 | 学校外活動費 | 合計(年額) |
公立小学校 | 6.6万円 | 3.9万円 | 24.8万円 | 35.3万円 |
私立小学校 | 96.1万円 | 4.5万円 | 66.1万円 | 166.7万円 |
公立中学校 | 13.2万円 | 3.8万円 | 36.9万円 | 53.9万円 |
私立中学校 | 106.1万円 | 0.7万円 | 36.8万円 | 143.6万円 |
小学生では、公立小学校と私立小学校で年間100万円以上の差があります。学費にあたる学校教育費は、公立で年間平均約7万円に対し、私立小学校では約96万円です。
また、塾や習い事などの学校外活動費にも大きな差が見られ、公立小学校に通う子どもで年間平均約25万円、私立小学校に通う子どもでは約66万円となっています。
中学生にかかる学校教育費は、公立で年間平均が約13万円、私立で約106万円という結果となっています。小学生との大きな違いは、塾などの学校外活動費が公立・私立ともに年間平均が約37万円で、ほとんど差はありません。
学校教育費が高額な私立の小・中学校に通う場合は、単純計算で毎月10万円以上の費用を工面する必要があります。貯蓄と普段の収入だけでカバーできない場合は、信用金庫や銀行などの教育ローンを活用するなど、さまざまな対策を考える必要があるでしょう。
就学援助制度について
小学校、中学校および義務教育学校に通う子どもがいて、経済的に困っている保護者に対し、学校で必要となる諸経費(学用品費・給食費・医療費等)の一部を援助する制度として、就学援助制度があります。[注3]
手続きは、保護者が住んでいる市町村に申請が必要で、援助の対象となる所得の基準は市町村ごとに異なります。
援助の詳しい内容は、市町村に確認しましょう。
高校生にかかる費用と補助制度
高校生にかかる費用の目安と活用できる補助制度について解説していきます。
高校生にかかる費用
文部科学省の調査によると、高校生にかかる年間の教育費は、次のとおりです。[注1]
学校種別 | 学校教育費 | 学校給食費 | 学校外活動費 | 合計(年額) |
公立高等学校 | 30.9万円 | ― | 20.4万円 | 51.3万円 |
私立高等学校 | 75.0万円 | ― | 30.4万円 | 105.4万円 |
公立高校では学校教育費が年間平均約31万円に対し、私立高校では約75万円の費用がかかります。
塾や家庭学習などの学校外活動費は、公立高校に通う子どもの年間平均が約20万円に対し、私立高校に通う子どもの年間平均は約30万円となっています。
高等学校等就学支援金について
「高等学校等就学支援金制度」は、高校の授業料に充てるための支援金を給付してもらえる制度のことで、公立高校であれば授業料が実質無料となり、無料で高校に通うことが可能です。 ただし、支援金制度はすべての生徒が同じ金額を支援されるわけではないため、対象者や所得条件(年収約910万円未満の世帯)などを事前に確認しておく必要があります。[注4]
また、高等学校等就学支援金のほか、高校生等奨学給付金、その他の修学支援策として家計急変への支援、学び直しへの支援、各都道府県が独自に実施する高等学校等奨学金等の事業があります。それぞれの詳細やお問合せ先については、文部科学省の「高校生等奨学給付金」[注5]「その他の修学支援策」[注6]のページで確認してみましょう。
また、私立高校では前述のとおり学校教育費の年間平均が約75万円のため、高等学校等就学支援金ではまかないきれない金額があります。
そのため、私立高校に対しては都道府県によって「私立高校生授業料助成支援等」など、国の就学支援金に上乗せする制度があります。
大学生にかかる費用と補助制度
大学生にかかる費用の目安と活用できる補助制度について解説していきます。
大学生にかかる費用
日本政策金融公庫の令和3年教育費負担の調査によると、大学生に関する費用は次のとおりです。[注7]
入学費用 | 1年間の在学費用 | |
私立文系 | 81万8,000円 | 152万円 |
私立理系 | 88万8,000円 | 183万2,000円 |
国公立 | 67万2,000円 | 103万5,000円 |
この費用のほか、自宅外から大学に通う場合は、仕送り額として年間95.8万円かかっています。
奨学金の活用
「奨学金」とは、経済的な理由や家庭の事情で進学が難しい方に向けて、学費の給付や貸与を行う制度です。多くの学生が奨学金制度を利用しおり、独立行政法人日本学生支援機構などが行っています。
日本学生支援機構の奨学金には次の3種類があります。[注8]
● 給付型:返済不要
● 貸与型一種:返済必要、無利子
● 貸与型二種:返済必要、有利子
奨学金は、学生本人が卒業してから返済する仕組みです。貸与が終了した月の翌月からカウントして7ヵ月目から返還が始まります。
奨学金の利息は2023年12月現在で0.905%となっているため、教育ローンより比較的低い金利で借り入れることが可能です。
ただし、奨学金には、学力基準や家計基準などの条件があるため、申し込めば必ず利用できるとは限りません。
高等教育の修学支援新制度
高等教育の修学支援新制度とは、専門学校・短期大学・大学への進学を希望する方に、家庭の所得金額に応じて授業料や入学金が減ったり、原則として返済する必要のない奨学金(給付型奨学金)がもらえたりする国の支援制度です。[注9]
この制度では住民税非課税世帯を中心に、以下の2つの支援を受けられます。
・授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)
・給付型奨学金の支給
支援の対象者は、
・世帯収入や資産の要件を満たしていること
・学ぶ意欲がある学生であること
の2つの要件を満たす学生全員です。
どのくらいの収入の世帯が対象となるか、どのくらいの給付型奨学金が受けられるかは、日本学生支援機構のホームページでシミュレーションすることができます。
子どもの教育にかかる費用はどのように貯める?
子どもの教育費は学校種別によって異なるものの、1,000万円以上に及ぶことから、子どもの教育費と利用できる公的サポートを把握した後は、計画的に貯蓄するなど自助努力を行うことが欠かせません。
基本的には貯蓄から教育費を用意しますが、それでも不足する場合は、信用金庫など金融機関の教育ローンを利用することも検討しましょう。
ここでは、必要な時期が決まっている教育費を用意する方法について紹介します。
長期でお金を貯める
計画性をもって長期的にお金を貯めることで着実に教育費を用意できます。例えば、毎月1万円を、子どもが小・中学生の間の9年間貯めることで、108万円の貯蓄ができます。
学資保険を利用する
民間保険会社が販売している学資保険も、教育費を用意するうえで有効な手段です。多くの学資保険は、高校や大学へ進学するタイミングでまとまった保険金を受け取れます。
学資保険を活用すれば、計画的に教育費を用意できるため、学資保険の加入を検討しましょう。
教育ローンを活用する
教育ローンとは、子どもの進学・在学資金を借りられるローンです。
日本政策金融公庫が行っている国の教育ローンと、信用金庫や銀行などの金融機関が行っている教育ローンの2種類に大別できます。いずれも、1~3%程度という比較的低い金利で借りることが可能です。
借入の条件は金融機関によって異なりますが、幅広いシーンで活用できるでしょう。
まとめ
教育費は総額で1,000万円以上に及ぶことが多いため、計画的に貯蓄することが欠かせません。
国や地方自治体では、教育を支援するために助成金や給付金制度を設けています。それでも足りない場合は、奨学金や信用金庫や銀行の教育ローンを活用するという方法もあります。
信用金庫などの金融機関では、貯蓄やローンの利用などについて相談に乗ってくれるため、わからないことがあれば、近くの金融機関に相談してみることをおすすめします。
[注1] 文部科学省「令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します」
[注3]文部科学省「就学援助制度について(就学援助ポータルサイト)」
[注4] 文部科学省「高等学校等就学支援金制度」
[注5]文部科学省「高校生等奨学給付金」
[注6] 文部科学省「その他の修学支援策」
[注7] 子供1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は減少~令和3年度「教育費負担の実態調査結果」~