しんきんマネーコラム
教育ローンと奨学金の違いとは?メリット・デメリットと選び方を解説

教育ローンと奨学金の違いとは?メリット・デメリットと選び方を解説

貯蓄でまかなえない教育費は、教育ローンや奨学金を活用することを検討しましょう。子どもの進学先によって、かかる教育費が大きく変わるため、早めに資金について計画を立てておくことが大切です。

この記事では、教育ローンと奨学金の違いや、上手に活用する方法を解説します。

教育ローンと奨学金の違いとは?

文部科学省の調査によると、大学進学の費用は4年制国立大学で約243万円、4年制私立大学の平均では約470万円と多くの資金が必要です。
貯蓄ですべてをまかないきれない場合は、信用金庫や銀行の教育ローンや日本学生支援機構などの奨学金を利用するという選択肢があります。

本項では、一般的な教育ローンと日本学生支援機構の奨学金(貸与型)を比較しながら、教育ローンと奨学金の大きな違いを確認していきましょう。

 教育ローン奨学金(貸与型)
第一種(無利子)第二種(有利子)
借りる人と返済する人学生の保護者学生本人
利息ありなしあり
資金の受取方法証書貸付型 希望額を一括で受け取る カードローン型 必要時にATMから受け取る毎月定額を受け取る
申し込み随時金融機関へ指定の時期に学校を通じて
借入可能額金融機関によって異なる進学先と通学形態により、 毎月2万円〜 6万4,000円毎月2万円〜 12万円まで
返済期間金融機関によって異なる定額返還方式の場合、貸与総額により決定 (最長20年)
返済猶予あり (在学中は利息のみの返済も可能)あり (在学中は無利息)

上記の表からわかるように、一般的な教育ローンと奨学金で大きく違う点は返済義務が保護者と学生本人のどちらにあるかです。
また、教育ローンでは多くの場合、借入当初にまとまった金額が借りられますが、奨学金では入学後に原則毎月定額が振り込まれるといった違いがあります。

教育ローンとは

教育ローンには、国の教育ローンと金融機関の教育ローンがあります。
金融機関の教育ローンは、信用金庫や銀行などで申し込み手続きができます。
また、教育ローンは奨学金と違い、いつでも申し込み手続きができるため、教育費の目処や返済計画が立てやすいことも特徴です。

教育ローンの種類

教育ローンには以下の2種類があります。

  • 国が運営する日本政策金融公庫の教育ローン
  • 信用金庫や銀行など金融機関の教育ローン

国の教育ローンと金融機関の教育ローンでは以下のような違いがあります。

 国の教育ローン金融機関の教育ローン
世帯年収(扶養する子どもが2人の場合)上限890(690)万円※なし
金利固定金利2.25%
(令和5年10月2日現在)
変動金利で1〜3%
固定金利で4%程度
方式証書貸付型証書貸付型カードローン型
資金の使い道大学等進学にかかるもの 入学金・授業料受験費用在学のための住居費用・定期代教科書・パソコンや学用品費など

大学に限らず、教育に関するすべての費用に適用可能(金融機関による)
申し込み期間志望校が決まればいつでも可能保育園や幼稚園以上の教育機関に在籍していればいつでも可能(金融機関による)
借入可能額原則350万円まで審査による
返済期間最長18年金融機関による
保証人機関保証または人的保証機関保証

※()内は給与所得者以外の場合

教育ローンは、借入当初に一括して借り入れできる証書貸付型が一般的です。また、金融機関の教育ローンでは、資金が必要なときに必要な金額をATMから借り入れできる、カードローン型を取り扱っている場合もあります。

ここからは金融機関の教育ローンについて説明します。

教育ローンのメリット

金融機関で借りる教育ローンは、借主が保護者となります。返済義務は保護者が負うため、子どもに返済の負担をかけずにすみます。
また、資金の使い道が学費だけでなく、一人暮らしをする際のアパートの初期費用や学用品など幅広いこともメリットの一つです。
さらに、入学前にまとまった金額の借り入れが可能なため、遠方への受験費用や入学前に必要な入学金、初年度の授業料に充てることも可能です。
奨学金は申し込み時期が限られているのに対し、教育ローンはいつでも申し込みができます。必要に応じて、入学する前の早い段階から申し込み、進学費用を支払う目処を立てられることもメリットです。

教育ローンのデメリット

金融機関で教育ローンを借りる際は、借主である保護者の返済能力や信用情報で審査されます。審査の結果、保護者の収入などにより、借りられる金額が制限される可能性があります。
また、日本学生支援機構の有利子奨学金の固定金利は2023年9月時点で0.937%ですが、教育ローンでは同じく固定金利の場合、4%前後となることがほとんどです。
教育ローンでは借主が保護者のため、子どもが就職後に返済を負担する必要がありません。一方で保護者にとっては、子どもが大学卒業後も先送りした教育費の負担が続くことになります。

奨学金とは

奨学金は、日本学生支援機構の奨学金が有名です。それ以外にも、地方自治体や民間企業による奨学金などがあります。
金融機関の教育ローンは借入当初に一括して資金が保護者の口座に振り込まれるのに対し、奨学金は入学後に毎月定額が子どもの口座に振り込まれます。
本記事を執筆している私自身、奨学金を借りていましたが、一人暮らしだったため毎月5万円程度を家賃や生活費に当てられてとても助かりました。

奨学金の種類

代表的な日本学生支援機構の奨学金には、返済不要の給付型と卒業後に返済が必要な貸与型があります。
2017年度から開始した給付型奨学金制度は、2020年に新制度がスタートしました。一律に学力基準を求めず、収入基準と「学ぶ意欲」の基準で支給が決まります。経済的な理由で進学をあきらめないために、給付型奨学金だけでなく、入学金や授業料の減免も併せて受けられるようになりました。

貸与型の奨学金は、第一種奨学金と第二種奨学金の2種類です。
第一種奨学金は無利子で借りられますが、明確な学力基準と家計基準が決まっています。

有利子となる第二種奨学金は、学力基準、家計基準があるものの、第一種奨学金と比べると緩和されています。

奨学金のメリット

貸与型の奨学金は、無利息または金融機関の教育ローンに比べて低金利で借りられることがメリットです。
また、有利子となる第二種奨学金においても卒業までは利息がかかりません。
卒業後、就職し半年ほど経過した10月から返済が始まるケースが多いので、返済は必要ですが教育ローンに比べると負担が少なくすみます。
また、入学後から卒業時まで定額で毎月振り込まれるため、使いすぎるなどの心配もありません。
私自身、卒業後返済を続けていますが、毎月13,000円程度の返済のため、出産などで仕事を休んでいる時期も返済を続けられています。

奨学金のデメリット

奨学金は毎月の返済負担が少ないとはいえ、子ども自身が返済していく必要があります。また金融機関の教育ローンと違い、奨学金は申込時に「機関保証」か「人的保証」を選択する必要があります。

●機関保証制度とは

日本学生支援機構が指定する保証機関に保証料を支払うことで、連帯保証を受けてもらう制度です。
奨学金の返還を一定期間延滞した場合、学生に代わり保証機関が日本学生支援機構に対して債務を支払います。その後、保証機関が学生に対し、日本学生支援機構に支払った額を一括して請求します。

●人的保証制度とは

学生の父母・親戚等に連帯保証人と保証人を引き受けてもらう制度です。
奨学金の返還を一定期間延滞した場合、連帯保証人・保証人にも延滞のお知らせや返還の請求・督促等が行われます。

さらに奨学金は、学力基準や家計基準など受給に条件があるため、借りられない場合もあります。また、奨学金は入学後原則毎月定額が振り込まれるため、入学金などのまとまった資金には使えないことに注意が必要です。
申し込み時期が学校ごとに異なるため、資金ニーズや申し込み時期を事前に調べておきましょう。

教育ローンと奨学金の選び方

教育ローンと奨学金には、それぞれメリット・デメリットがあります。
大学進学には入学前から、受験費用、入学金、初年度授業料などまとまった資金が必要です。

本項では金融機関の教育ローンと奨学金が、それぞれどのような人におすすめかについてまとめています。

教育ローンがおすすめの人

教育ローンは、入学前にかかる受験費用や入学金、初年度費用などのまとまった資金を予め準備したい人におすすめです。
借入当初にまとまった資金が借りられるため、私立大学の医学部などにかかる高額な費用にも対応できます。
借主が保護者のため子どもに返済の負担をかけたくない場合や、奨学金の受給条件の学力基準や収入基準の面で合わない場合も、信用金庫や銀行で申し込める教育ローンを検討しましょう。

奨学金がおすすめの人

奨学金を受給する基準を満たせる場合は、金融機関の教育ローンに比べて金利が低い、もしくは無利子で借りられる奨学金がおすすめです。
有利子の場合でも、低金利で借りられて利息は卒業後から発生するため、返済の負担が軽くなります。
ただし入学後の支給となるため、入学前に必要な資金を事前に用意できるか確認しましょう。
入学当初に必要な費用は用意できるが、一人暮らしのため毎月の資金が必要であったり、翌年度以降の授業料を払うためにお金を貯めておきたい等のケースにおいては奨学金の利用が有効です。

まとめ

子どもの進路や家庭の経済状況によって、教育ローンや奨学金の利用を計画的に検討することが大切です。
金融機関の教育ローンは、借入当初にまとまった資金を1回で借入できる証書貸付型と、必要なときに必要な金額をATMで出金できるカードローン型の2種類があります。金融機関の教育ローンは、信用金庫でも借りられるので相談してみましょう。

教育ローンで当初まとまった金額を借り入れし、奨学金で毎月の生活費や初年度以降の学費をまかなうなど、教育ローンと奨学金を併用することもできるので、検討してみてはいかがでしょうか。

執筆 古澤 綾

金融記事のフリーライター。
大手保険会社で5年間勤務。在職中は主にリタイア後の相続相談を多数受けるも、保険だけでは解決できないことが多いと感じ、若い世代にも広く金融知識を広めるためフリーライターに転身。
教育学部出身で2児の母。2級ファイナンシャルプランニング技能士。

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