しんきんマネーコラム

住宅ローンを使った不動産投資はNG!ばれる理由とリスクを解説

住宅ローンを不動産投資に利用することはできません。不動産投資を検討している方の中には、資金調達のために住宅ローンが利用できるかどうか知りたいという方もいるでしょう。しかし、住宅ローンを不動産投資に利用することは、金融機関との契約上禁じられています。仮に不動産投資への利用が発覚すると、重大なペナルティを受けることもあります。

本記事では、住宅ローンと不動産投資ローンの違いや、不動産投資への流用が発覚する理由、受けるペナルティについて詳しく解説します。

住宅ローンを使った不動産投資は禁止行為に該当する

不動産投資への住宅ローンの利用は、金融機関との契約上禁じられています。

そもそも住宅ローンは、「契約者本人またはその家族」が居住するための住宅を対象として、優遇された金利が設定されている商品です。不動産投資ローンよりも金利が低いことや、住宅ローン控除が適用されることから、不動産投資に住宅ローンを利用してしまう方もいます。

住宅ローンを使って不動産投資を行うことは、契約で定められた利用用途に反する行為となり、発覚した場合は重大なペナルティを受ける可能性があります。

住宅ローンと不動産投資ローンの違い

住宅ローンと不動産投資ローンには、借入目的や金利などいくつかの点で違いがあります。主な違いは以下のとおりです。

 住宅ローン不動産投資ローン
目的住宅の購入・増改築の費用投資用物件の購入費用
返済原資(一般的には)給与収入家賃収入
融資金額年収の5~8倍程度年収の10~20倍程度
金利0.5~4.0%程度1.5~8.0%程度

住宅ローンの返済原資は借りた方の収入になるのが一般的ですが、不動産投資ローンの返済原資は投資物件から得られた家賃収入となります。融資金額は審査内容により異なるため、一概にはいえませんが、住宅ローンでは年収の5~8倍程度、不動産投資ローンでは年収の10~20倍程度が目安とされています。金利は住宅ローンのほうが低い傾向があり、住宅ローンでは0.5~4.0%程度、不動産投資ローンでは1.5~8.0%程度が目安です。 なお、不動産投資ローンでは返済原資に家賃収入が含まれるため、審査の際は物件の収益性も考慮されます。

住宅ローンを使った不動産投資がばれる理由

住宅ローンを不動産投資に利用したことがばれる理由として、主に以下の4つが挙げられます。

  • 郵便物の不着
  • 金融機関担当者の訪問
  • 全件調査の実施
  • 確定申告の内容

それぞれの理由を確認していきましょう。

郵便物の不着

金融機関からの郵便物が宛先不明で戻った場合、その原因を調査する中で不正利用が発覚することがあります。

住宅ローンを利用して購入した物件は、契約者本人またはその家族が居住することが前提とされています。しかし、家賃収入を目的に第三者へ賃貸している場合、住んでいるのは別人です。

そのため、金融機関が契約者へ郵便物を送ったとしても、本来なら契約者やその家族が住んでいるはずの住所から差し戻されてしまいます。すると、金融機関によって住所確認などの調査が行われ、不動産投資に利用していると発覚する場合があります。

金融機関担当者の訪問

金融機関の担当者が、営業などのために自宅を訪問して発覚する可能性があります。たとえば、以下のようなケースでは、金融機関の担当者による自宅訪問が行われることがあります。

  • 地域密着型の金融機関で、顧客とのコミュニケーションを定期的に取っている
  • 住宅ローンの返済を延滞している

訪問した際に、契約者とは別の方が住んでいると、住宅ローンとして借りた資金で不動産投資をしていることが発覚するきっかけとなります。

全件調査の実施

不動産事業者が関与した住宅ローンの不正利用といった事件が起きたときなどに、金融機関は全件調査を行うことがあります。 全件調査は不正利用を防ぐために行われ、契約者や居住の実態などについて細かく調査されます。そのため、住宅ローンで借りた資金を不動産投資に流用すると、高確率で発覚すると認識しておきましょう。

確定申告の内容

不動産投資で得た家賃収入は確定申告をする必要があり、そのタイミングで発覚するケースがあります。住宅ローンを利用すると、節税効果のある住宅ローン控除の適用が可能です。しかし、不動産所得が増えた年に住宅ローン控除を受け始めていることが判明すると、確定申告の内容が怪しまれる原因となります。この場合、税務調査が行われ、所得の内訳やローン状況などが細かくチェックされた結果として、不正利用が発覚する可能性があります。

住宅ローンを使った不動産投資がばれるとどうなる?

住宅ローンを不動産投資に利用したことが発覚すると、契約違反としてペナルティを受ける可能性があります。主なペナルティとして、以下が考えられます。

  • 一括返済を求められる
  • 金融機関との取引が難しくなる
  • 契約違反による法的措置がとられる

知らなかったでは済まされないため、ペナルティについて十分に理解しておきましょう。

一括返済を求められる

住宅ローンを不動産投資に利用したことがばれると、借入金の一括返済を求められることがあります。というのも、住宅ローンを不動産投資に利用することは、金融機関との契約に違反するためです。住宅ローンの契約の中には、もし違反があった場合に金融機関が残債の一括返済を請求できる条項が盛り込まれています。

一括返済といっても、すぐに現金で全額を返済できるとは限りません。実際のところ、任意売却や競売によって住宅を処分し、その代金を返済に充てるのが一般的です。それでも全額返済できなければ、残債について支払い義務が残ります。

金融機関との取引が難しくなる

住宅ローンを不動産投資に利用したことがばれると、それ以降の金融機関との取引が難しくなるおそれがあります。 金融機関では、契約違反など信頼を損なう行為をした顧客を要注意顧客として記録していることがあるため、今後の取引ができなくなる可能性があります。

契約違反による法的措置がとられる

不動産投資への利用が計画的なものとみなされた場合、詐欺罪として告訴される可能性があります。自分が住むためではなく、最初から不動産投資を目的として住宅ローンに申込むことは、金融機関をだます行為だからです。 住宅ローンを不動産投資に利用することは、人生を左右する重大な事態に発展しかねないということを覚えておきましょう。

住宅ローンでの不動産投資をすすめる業者に注意

不動産投資会社の中には、住宅ローンの不正利用をすすめる悪質な業者も存在するため、だまされないように注意が必要です。不動産投資セミナーやSNSなどで「住宅ローンを利用すれば金利が低くてお得です」といった話を持ちかけられるケースが多いです。

たとえば、フラット35を利用した勧誘も行われており、公式サイトでも注意喚起がなされています。

悪質な業者は、「住宅ローンを利用してもばれません」「必ず儲かります」などと、言葉巧みに勧誘してきます。業者の言葉を真に受けて契約したとしても、最終的に責任を負うのはローン契約者自身です。悪質な業者からの勧誘には十分に注意しましょう。

参照:フラット35「【フラット35】を不適正に利用し、投資用物件を取得させようとする悪質な勧誘にご注意ください。」

不動産投資ローンと住宅ローンを両方借りられる?

不動産投資ローンと住宅ローンをそれぞれ利用することは可能です。しかし、一方の借入れが、もう一方の融資判断や融資条件に影響を及ぼす可能性があります。たとえば、不動産投資ローンを契約した後に住宅ローンを申込むと、不動産投資ローンの残債が住宅ローンの審査に影響し、審査が通らないこともあります。 どちらを優先するか検討するとともに、返済可能かどうかも十分にシミュレーションする必要があります。それぞれの特徴や融資条件などをきちんと理解しておくことが大切です。

住宅ローンを不動産投資に不正利用するのは絶対にやめよう

住宅ローンは自分や家族が住む住居を取得するためのローン商品であり、不動産投資に利用することはできません。不正利用が発覚した場合、重大なペナルティを受けるのはローン契約者自身です。悪質な業者からの勧誘にだまされず、住宅ローンは適正に利用しましょう。

執筆 木内菜穂子

金融機関や税理士事務所での勤務を経て、現在は金融・保険ライターとして執筆活動を行う。主に公的年金制度や社会保障制度、生命保険、NISAなどの情報を発信中。難しいお金の話を分かりやすく伝えることをモットーとする。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、一種外務員資格、年金アドバイザーの資格を保有。

監修 水野崇

CFP/1級FP技能士。東京理科大学卒業。中学、高校、大学、専門学校で金融経済教育を行うほか、テレビ朝日、BSテレ東、TOKYO MXの番組に出演。NHKドラマ「3000万」家計監修。「水野総合FP事務所」代表として、相談、執筆・監修、講演・講師、取材協力、メディア出演など幅広く活動している。
【URL】https://mizunotakashi.com/

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