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墓じまいとは
墓じまいとは、お墓から遺骨を取り出し、墓石を解体・撤去して墓石があった土地の使用権を寺院や霊園などの管理者に返還することです。一般的には、取り出した遺骨を新たな方法で供養するまでを墓じまいと捉えられます。
子どもにお墓の維持管理の負担をかけたくない人や、複数存在するお墓をまとめたい人、また、自分が死んだ後のお墓の管理が不安なおひとり様などが検討します。
50代の筆者のまわりでも、墓じまいの話題が上ることも多くなりました。実際にここ10年で墓じまい(改葬)を行った人は約1.9倍に増えており、2022年度の厚生労働省「衛生行政報告例」によると、全国で15万1,076件と過去最多の件数となっています。[注1]
今回は、お墓の跡継ぎ(継承者)がいない場合の対処法について解説していきます。
墓じまいの手順とは
墓じまいには様々な手続きが伴いますが、もっとも大切なのは、墓じまいをするか決める段階における家族や墓地の管理者との話し合いでしょう。家族や親族にはそれぞれの想いがあり、トラブルになる場合もあるからです。長年お世話になった寺院や霊園へも、墓じまいを検討する事情を感謝の意を込めて丁寧に説明することが大切です。また、墓じまいした後の新たな供養先の検討も早い段階で始めましょう。墓じまいは、どうすればお墓に眠るご先祖様が今後も安心して過ごせるか、家族や親族であらためて考えられる大きなタイミングと言えます。
家族や墓地の管理者に相談する
最初の大切なステップは、家族や墓地の管理者への相談です。家族や親族の意向や想い、寺院や霊園など墓地のルールや手続きについての情報を共有し、墓じまいをするかどうかを考え、する場合はスムーズに墓じまいできるよう計画を立てます。のちにトラブルになることのないように、十分な話し合いと情報収集が重要です。
新たな供養先を決める
次に、墓じまいにて取り出した遺骨を新たに供養する方法を決めなければいけません。お墓の継承者がいない場合は、「永代供養墓」を検討することをお勧めします。永代供養墓とは、継承者に代わって寺院や霊園などが責任を持って遺骨を永代供養してくれるお墓のことです。永代供養の「永代」は「永久」ではなく、契約期間が決まっていることがほとんどです。期間が過ぎた遺骨は、合祀(骨壺から遺骨を取り出し、他人の遺骨とまとめて埋葬する)して合祀墓で供養されることが多いようです。
家族や親族とよく話し合い、一般墓、納骨堂や散骨など供養方法、および永代供養にするかも併せて検討します。一般墓や納骨堂、樹木葬などお参りができる方法を選ぶ場合は、アクセスのしやすさも検討材料となります。
改葬の行政手続きをする
墓じまいをするために必要な「改葬許可証」は取得までに約1週間かかります。そのため閉眼供養の約1週間前には、今のお墓がある市区町村役場において手続きが必要です。役場から「改葬許可申請書」を、今の墓地の管理者から「埋蔵証明書」を入手します。なお改葬許可申請書の書類内で、墓地の管理者が埋蔵を証明する様式もあります。新たな供養先から「受入証明書」を入手し、これらを自治体に提出して「改葬許可証」を受け取ります。改葬許可証はお骨一柱(ひとはしら)につき1枚必要ですので、お墓に3名眠る場合は3枚必要となります。
閉眼供養を行う
閉眼供養とは、墓じまいするお墓から故人の魂を抜く儀式です。墓地にて家族や関係者が集まり僧侶による読経が行われます。もし改葬先で新たに墓石を建てる場合は、新たな墓石の前で魂を入れる儀式である開眼供養が行われ、魂の引っ越しが完了します。なお閉眼供養や開眼供養は、墓じまいのために必ずしもしなければいけないわけではありません。また、神式やキリスト式の場合は基本的に不要とされます。
墓石を解体・撤去する
石材店などに依頼して、墓石の解体・撤去をして更地にしてもらい、寺院や霊園などの管理者に返還します。
新しい供養先に納骨する
新たな墓石や納骨堂、散骨など、選んだ供養方法に応じた手続きを行い、家族や関係者が集まって、故人を新たな供養先に納骨します。納骨を通じて、故人の魂が安らかに眠ることを願い、墓じまい完了となります。
墓じまいの費用にはどんなものがある?
墓石撤去費用
一般的に墓石の撤去には10万円から30万円程度の費用がかかります。ただし、墓石の大きさや形状、撤去方法によっても費用は異なるため、事前に依頼する石材店などの業者に相談して詳細な見積もりを取っておきましょう。
離檀料・閉眼供養料
墓じまいに際し寺院に墓がある場合は、檀家を離れるための離檀料や、閉眼供養のお布施がかかることがあります。離檀料は法要1回分の金額が目安と言われますが、寺院によっては受け取らないことがある一方で、かなり高い金額を請求されることもあります。トラブルを防ぐためにも事前に十分にコミュニケーションを取り、墓じまいの事情を説明、感謝の意を伝えることが重要です。
納骨先にかかる費用
新しい納骨先の一般的な選択肢と概要、目安の費用をお伝えします。平均金額は、日本最大級のお墓の情報サイト「いいお墓」による「第15回 お墓の消費者全国実態調査(2024年)」より引用しています。[注2]
・永代供養付き一般墓: 100万円〜300万円程度
ご家族のお墓を建て、代々お守りいただきながら、万が一、お墓の継承者が途絶えた場合、寺院や霊園が責任を持って永代供養墓に改葬し、以降は丁重に供養・管理します。跡継ぎがいない方でも、無縁仏になる心配はありません。
・樹木葬: 20万円〜100万円程度
桜など花木を墓碑として建て、まわりに粉状の遺骨を直接埋葬する場合と、骨壺に入れて埋葬する場合があります。永代供養できる方法の一つで、平均金額は63.7万円です。樹木葬は特に“自然に還る”“樹木に囲まれた墓地”として近年話題となり、人気があります。
・納骨堂: 20万円〜150万円程度
ロッカー式のものや仏壇式などに遺骨を納め安置してもらえる施設で、永代供養できる方法の一つです。屋内であることが多く、天候を気にせずお参りできるのも魅力で、平均金額は80.3万円です。
・散骨: 3万円〜70万円程度
粉状にした遺骨を、散骨が認められている海や山などに撒く方法です。すべてを散骨せずに、一部の遺骨を手元供養することも可能です。
行政手続きにかかるお金
自治体によって金額は異なりますが、改葬証明書など書類の取得費用などで、数百円~1,000円程度かかります。
墓じまいの費用が払えないときはどうすればいい?
「【第3回】改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)」によると、墓じまいを検討したけどやめた理由の第1位は「解体費用が高すぎた」ことだそうです。[注3]
費用がネックとなり諦める前にできることをまとめます。
家族や親戚に相談する
まずは家族や親戚に、費用負担を分担できないか相談してみましょう。お墓は自分だけのものではないからです。
補助金等の制度を活用する
自治体によっては、要件を満たした場合に墓じまいにかかる費用の一部を助成してくれる制度があります。まずはお墓がある自治体の制度を調べてみましょう。
ローンを利用する
費用を一括で支払うことが難しい場合、信用金庫など金融機関のフリーローンの利用を検討してみましょう。自治体によっては、信用金庫などの金融機関と連携して、利息相当額を補給してくれる場合もあるようです。まずはお墓がある自治体の制度を調べてみましょう。
まとめ
お墓の跡継ぎがいないときは、墓じまいをして、永代供養墓に改葬することを検討してみたらいかがでしょうか。永代供養墓には、樹木葬や納骨堂など、様々な種類があります。自分やご家族に合った永代供養墓を探してみましょう。
[注1]厚生労働省「衛生行政報告例」
[注2]【第15回】お墓の消費者全国実態調査(2024年)霊園・墓地・墓石選びの最新動向
[注3]【第3回】改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)