しんきんマネーコラム

【2025年】子育てグリーン住宅支援事業とは?条件・要件を解説

高い省エネ性能を持つ住宅の新築やリフォームを支援する国の補助金制度として、「子育てグリーン住宅支援事業」があります。名前から子育て世帯のみが対象と思われるかもしれませんが、実はすべての世帯が対象になる事業です。

本記事では、子育てグリーン住宅支援事業の概要や、子育てエコホーム支援事業との違い、対象者と要件の詳細についてわかりやすく解説します。住宅の新築やリフォームを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

子育てグリーン住宅支援事業とは?

「子育てグリーン住宅支援事業」とは、国が実施する補助金制度の1つです。2023年の「こどもエコすまい支援事業」、2024年の「子育てエコホーム支援事業」の後継にあたる事業です。補助額や対象に違いがあるため、利用にあたっては内容をよく理解し、制度の対象となるかどうか判断する必要があります。

子育てグリーン住宅支援事業の概要

子育てグリーン住宅支援事業とは、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて国が設けた補助金制度です。省エネに配慮した住宅の新築や既存住宅のリフォームを対象に、省エネ性能やリフォームの内容に応じた補助金が支給されます。

2024年の子育てエコホーム支援事業の後継事業ですが、補助額や対象世帯に違いがあります。特に、対象となる住宅として「GX志向型住宅」(ZEH基準※の水準を大きく上回る省エネ性能を有する、脱炭素志向型の住宅)が新たに加わりました。GX志向型住宅であればすべての世帯が補助金の支給対象となった点は大きな変更点といえるでしょう。なお、子育てエコホーム支援事業の交付申請の受付は、2024年12月31日をもって終了しています。
※ZEHは「Net Zero Energy House」の略称で、省エネルギーを実現した上で再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅のことです。ZEH基準とは、ZEH住宅として認められるための4つの基準を指します。

参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「事業概要」
参照:子育てエコホーム支援事業【公式】「※重要※交付申請の受付を終了しました。​」
参照:国土交通省「住宅:ZEH・LCCM住宅の推進に向けた取組」

子育てエコホーム支援事業との違い

2024年の子育てエコホーム支援事業との主な違いは、以下のとおりです。

 子育てグリーン住宅支援事業子育てエコホーム支援事業
対象住宅●GX志向型住宅
●長期優良住宅
●ZEH水準住宅
●長期優良住宅
●ZEH水準住宅
対象世帯(新築)●GX志向型住宅はすべての世帯
●上記以外は子育て世帯・若者夫婦世帯
●子育て世帯・若者夫婦世帯  
対象世帯(リフォーム)●すべての世帯●すべての世帯
補助額(新築)●GX志向型住宅:160万円/戸
●長期優良住宅:80万円/戸
●ZEH水準住宅:40万円/戸
●長期優良住宅:最大100万円/戸
●ZEH水準住宅:最大80万円/戸
補助額(リフォーム)●最大60万円/戸●子育て世帯・若者夫婦世帯:最大60万円/戸
●上記以外の世帯:最大30万円/戸

新築の補助額が、1戸あたり160万円に増額されました。また、GX志向型住宅はすべての世帯が補助金支給の対象となります。

参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「事業概要」
参照:子育てエコホーム支援事業【公式】「子育てエコホーム支援事業について」

子育てグリーン住宅支援事業の対象者

子育てグリーン住宅支援事業の対象者となる詳しい要件は、以下のとおりです。

対象住宅対象者
新築(GX志向型住宅)グリーン住宅支援事業者と工事請負契約を締結し住宅を新築する、または不動産売買契約を締結し新築分譲住宅を購入するすべての世帯
新築(長期優良住宅・ZEH水準住宅)グリーン住宅支援事業者と工事請負契約を締結し住宅を新築する、または不動産売買契約を締結し新築分譲住宅を購入する子育て世帯・若者夫婦世帯
リフォームグリーン住宅支援事業者と工事請負契約等を締結しリフォーム工事をする、住宅の所有者等※

※グリーン住宅支援事業者との工事請負契約等が結ばれていない工事は対象外

一部の対象住宅では、子育て世帯または若者夫婦世帯のいずれかであることが対象要件の一つです。子育て世帯とは、申請時点で子を有する世帯のことで、具体的には2024年4月1日時点で18歳未満の子どもがいる世帯を指します。若者夫婦世帯とは、申請時点において夫婦であり、いずれかが若者である世帯のことで、具体的には2024年4月1日時点で夫婦のいずれかが39歳以下の世帯を指します。

なお、新築(GX志向型住宅)については2025年7月22日時点で予算上限に達しているため、受付が終了しています。

参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「対象要件の詳細【注文住宅の新築】」
参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「対象要件の詳細【新築分譲住宅の購入】」
参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「対象要件の詳細【リフォーム】」
参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「※重要※ 新築・GX志向型住宅分の補助金申請額が予算上限額に達したため、交付申請(予約含む)の受付を終了しました。」

子育てグリーン住宅援事業の条件・要件と補助額

子育てグリーン住宅支援事業は、条件・要件や補助額が住宅の省エネ性能やリフォーム工事の内容によって異なります。リフォームについては対象となる工事の種類と組み合わせが細かく設定されているため、要件をよく確認することが大切です。

新築住宅の条件・要件と補助額

新築住宅(注文住宅・分譲住宅)に対する補助金は、住宅の省エネ性能に応じて金額が異なります。具体的な金額は以下のとおりです。

区分要件1戸あたりの補助額古家の除却を伴う場合の補助額の加算額
GX志向型住宅ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ性能を有する、脱炭素志向型の住宅160万円なし
長期優良住宅長期にわたり良好な状態で使用できる措置が講じられ、所管行政庁から認定を受けた住宅80万円20万円
ZEH水準住宅断熱性が高く、一定の省エネ性能を満たしている住宅40万円20万円

すべての住宅区分において、補助金の対象となるのは床面積が50平米以上かつ240平米以下の住宅となります。GX志向型住宅はすべての世帯が対象となりますが、長期優良住宅およびZEH水準住宅は、子育て世帯と若者夫婦世帯のみが対象となります。

詳しい要件については、国土交通省・環境省の案内もあわせてご確認ください。

参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「対象要件の詳細【注文住宅の新築】」
参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「対象要件の詳細【新築分譲住宅の購入】」
参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「新築住宅の省エネ性能」

リフォームの条件・要件と補助額

リフォームの場合、その条件や金額は複雑です。ここでは、対象となるカテゴリーと補助額の例をご紹介します。

区分カテゴリー要件補助額の例(一部)
必須工事開口部の断熱改修2つ以上のカテゴリーの必須工事を行った場合のみ対象となるドア交換:最大4万9,000円/箇所
躯体の断熱改修外壁・間仕切壁:最大16万9,000円/戸
エコ住宅設備の設置蓄電池:6万4,000円/戸
任意工事子育て対応改修2つ以上のカテゴリーの必須工事を行ったうえで実施する場合のみ対象となるキッチンセットの交換を伴う対面化改修:9万1,000円/戸
防災性向上改修外窓交換:最大4万1,000円/箇所
バリアフリー改修廊下幅等の拡張:2万8,000円/戸
空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置最大2万7,000円/台
リフォーム瑕疵保険等への加入7,000円/契約

補助金の対象となるためには、2つ以上の必須工事を含まなければなりません。そのうえで、1申請あたりの補助額の合計が5万円以上となれば補助対象となります。それぞれの詳しい条件や対象となる設備について、国土交通省・環境省の案内もあわせてご覧ください。

参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「対象要件の詳細【リフォーム】」

子育てグリーン住宅支援事業の申請手順

新築住宅・リフォームそれぞれの申請手順(一部抜粋)は、以下の画像のとおりです。

補助金の交付申請はグリーン住宅支援事業者が行います。事前登録された事業者・工事施工業者でなければ申請できないため、登録の有無を確認しておきましょう。グリーン住宅支援事業者と工事請負契約・不動産売買契約と共同事業実施規約を結んでから、工事が開始されます。

なお、新築の場合、補助金は原則として購入代金の最終支払いの一部に充当されます。

申請のタイミングを逃さないよう、計画的な準備が必要です。申請に不安を抱く方もいるかもしれませんが、手続きは基本的にグリーン住宅支援事業者が行います。詳しい手順については、国土交通省・環境省の案内も確認しておきましょう。

参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「申請手続きの詳細【注文住宅の新築】」
参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「申請手続きの詳細【新築分譲住宅の購入】(通常の交付申請)」
参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「申請手続きの詳細【リフォーム】」

子育てグリーン住宅支援事業の注意点

子育てグリーン住宅支援事業を利用して確実に補助金を受け取るためには、いくつかの注意点があります。基本的に申請手続きは事業者によって行われますが、以下のポイントについてはよく理解しておくようにしましょう。

  • 予算上限に達すると終了してしまう
  • 補助金の対象にならないケースがある
  • 確定申告が必要になる可能性がある

それぞれの注意点について、詳しく解説します。スムーズに申請を進めるためにも、きちんと把握しておきましょう。

予算上限に達すると終了してしまう

子育てグリーン住宅支援事業は国の予算で運営されており、予算に上限があります。そのため、締切日よりも前に受付が締め切られてしまう可能性があります。公式HPにて申請の受け付け状況や予算状況を確認のうえ、早めに準備を始めましょう。

なお、子育てグリーン住宅支援事業は、新築については3期に分けて受け付けており、すでに1期および2期は受付を終了しています。また、前述のとおり、新築のうちGX志向型住宅は予算上限に達したため、受付を終了しています。

参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「※重要※ 新築・GX志向型住宅分の補助金申請額が予算上限額に達したため、交付申請(予約含む)の受付を終了しました。」

補助金の対象にならないケースがある

新築住宅の場合は立地などの除外要件があり、補助対象にならないケースがあるため、注意が必要です。具体的には、以下のいずれかに該当する場合は適用対象外となります。

  1. 「土砂災害特別警戒区域」に立地する住宅
  2. 「災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域または地すべり防止区域と重複する区域に限る)」に立地する住宅
  3. 「市街化調整区域」であって「土砂災害警戒区域」もしくは「浸水想定区域」に立地する住宅
  4. 都市再生特別措置法第88条第5項の規定により、当該住宅に係る届出をした者が同条第3項の規定による勧告に従わなかった旨が公表された住宅

なお、上記の1〜3に該当する場合でも、建て替えに該当する新築住宅は補助対象となります。除外要件について、詳しくは国土交通省・環境省の案内を確認しておきましょう。

参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「新築住宅の立地等の除外要件」

確定申告が必要になる可能性がある

受け取った補助金は、税法上は一時所得の扱いとなります。一時所得の年間の非課税額は50万円のため、50万円以下であれば確定申告は不要ですが、50万円を超える場合は確定申告が必要です。普段自分で確定申告をしない給与所得者や、所得のない方も必要になるケースがあるため、注意しましょう。

なお、補助額自体が50万円に満たなくても、ほかの一時所得との合計が50万円を超えると確定申告が必要です。補助金以外の一時所得には、懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金、生命保険の一時金などがあります。

参照:国税庁「No.1490 一時所得」

子育てグリーン住宅支援事業についてのよくある質問

これから住宅を新築する予定のある方やリフォームを検討している方にとって、子育てグリーン住宅支援事業は魅力のある補助金制度といえるでしょう。しかし、要件が細かく設定されているなど、わかりにくい点が多いことも事実です。そこで、子育てグリーン住宅支援事業についてのよくある質問をご紹介します。

ほかの補助金・制度とは併用できる?

基本的に、1つの住宅に対して子育てグリーン住宅支援事業と国のほかの補助事業とを併用することはできません。ただし、国費が充当されていない地方公共団体の補助制度とは併用が可能です。詳細は、各補助金制度の要件を確認しましょう。

なお、住宅ローン控除との併用は可能です。住宅ローン控除とは、個人が住宅ローンを利用して住宅を購入した際に、最大13年間、年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。

住宅ローン控除については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:「住宅ローン控除とは?2024年の制度概要と適用条件を解説|ここしん

補助金はいつどのように受け取る?

補助金は、事業者から実績報告が行われた後に事業者を通じて支給されます。新築(注文住宅・分譲住宅)の場合は原則として、建築・購入代金の最終支払いの一部に充当する形で還元されます。リフォームの場合は、契約代金(最終支払いに限る)に充当する方法と現金で支給される方法のいずれかによって還元されます。

そのため、工事費用は一旦すべて自己負担しなければなりません。申請書類の準備や審査に時間がかかる可能性もあるため、スケジュールに余裕を持たせることが大切です。

参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「申請手続きの詳細【注文住宅の新築】」
参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「申請手続きの詳細【新築分譲住宅の購入】(通常の交付申請)」
参照:子育てグリーン住宅支援事業【公式】「申請手続きの詳細【リフォーム】」

子育てグリーン住宅支援事業は早めの申し込みが大切

子育てグリーン住宅支援事業の概要や具体的な要件、申請手順、注意点などを解説しました。子育てグリーン住宅支援事業は、子育て世帯や若者夫婦世帯をはじめとするすべての世帯が、省エネ性能の高い安心な住まいづくりをバックアップするための制度です。

制度を活用するためには、条件や手続きの内容をよく理解する必要があります。また、国の予算には上限があり、上限に達してしまうとその時点で締め切りとなってしまうため、早めの準備を心がけましょう。

執筆 尾関久子

監修 桜井鉄郎

FP兼金融・不動産ライター 東証プライム上場の金融機関で住宅ローンの相談販売を担当(相談件数:約2,000件)。最適な返済プランや返済開始後のライフプランをFPの視点で顧客に提案。マイホーム購入に関連する法令・税額控除制度等も解説。
<保有資格>FP1級、行政書士、宅地建物取引士、証券外務員1種ほか

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