再就職手当とは?受給までの流れ・メリット・デメリットを紹介

再就職手当とは?受給までの流れ・メリット・デメリットを紹介

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失業後に新しい職場が決まった場合、一定の条件を満たせば再就職手当を受け取れます。再就職手当は、失業手当の受給者が早期に再就職した際に支給される制度です。
ただ、「失業手当と何が違うの?」「再就職手当の受給要件を満たしているかわからない」と疑問に思っている方も多いでしょう。本記事では、制度の仕組みや受給要件、支給額、申請の流れなどを解説します。

再就職手当とは

再就職手当とは、雇用保険の受給資格がある人が、失業手当の支給期間を残したまま早期に再就職した場合に支給される手当です。早期の再就職を後押しし、再就職後の生活を安定させることを目的として設けられています。

再就職手当の支給額は、残っている失業手当の日数に応じて決まるため、再就職が早ければ早いほど手当金の額が大きくなるのが特徴です。

再就職手当を受け取ることで、再就職後の収入が安定しやすくなりますが、失業手当を満額受給する場合に比べて受給総額が少なくなるケースもあります。そのため、自分の状況に応じて、制度を活用するか検討することが大切です。

失業手当との違い

再就職手当と失業手当は、いずれも雇用保険の制度ですが、支給の目的や受給のタイミングが異なります。
失業手当は、離職によって収入が途絶えた人の生活を支えるために設けられた制度です。再就職先が見つかるまでの最大360日間を上限に給付が行われ、失業中の生活を安定させることを目的としています。

一方、再就職手当は、早い段階で再就職や開業を決めた人に対し、残りの失業手当分の一部をまとめて支給する制度です。早期の就職を促すインセンティブのようなもので、再就職後の申請から1〜2ヵ月後に支給されます。金額は、再就職時点での失業手当の残日数に応じて計算され、通常は失業手当の残額の6〜7割が一括で支給されます。

例えば、生活費に余裕がなく早めに収入を得たい人、すでに希望する職種や条件の求人が見つかっている人には再就職手当の活用が適しています。
一方で、心身を休めたい人や、じっくりと自分に合う仕事を探したい人は、失業手当を満額まで受給しながら慎重に再就職先を検討するのがおすすめです。

再就職手当の受給要件

再就職手当の受給要件

再就職手当を受け取るには、ハローワークが定める以下の要件をすべて満たしている必要があります。そこで、すべての項目を正しく理解するために用語解説と注意点まで確認いただき、再就職手当の受給に役立ててください。

① 待期期間(7日間)を過ぎてから就職・開業していること
●用語解説
待期期間:ハローワークで失業保険の受給手続きをした後、最初の7日間のこと。

●注意点
この期間は失業状態であることを確認するための期間で、どのような理由で退職した人でも必ず設けられます。アルバイトなども原則禁止です。

② 失業手当の残り日数が3分の1以上残っていること
●用語解説
失業手当の残り日数(支給残日数):失業手当のうち再就職時点でまだ受け取っていない日数のこと。90日分もらえる人が30日分受け取っていたら、残り日数は60日です。

●注意点
支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上残っていない場合は対象外です。90日分もらえる人が70日分受け取っている場合、支給残日数が30日を下回っているので再就職手当は受給できません。

③ 前職または前職の関係会社以外の事業主に就職していること
●用語解説
前職の関係会社:前の勤務先の親会社、子会社、グループ会社など、資本関係や人事交流がある会社のことです。

●注意点
前職または前職の関係会社以外の事業主への就職でなければ、再就職手当は受給できません。例えば、A社を退職してA社の子会社B社に就職した場合は対象外になります。

④ (給付制限がある場合)待期期間満了後1ヵ月以内は、紹介による就職であること
●用語解説
給付制限:自己都合退職の場合に設けられる、失業保険がもらえない期間のこと。2025年3月までは2ヵ月でしたが、2025年4月以降は1ヵ月に短縮されています。
紹介による就職:ハローワーク、職業紹介事業者(人材紹介会社など)、または会社の再就職支援会社を通じて就職することを指します。

●注意点
待期期間満了後1ヵ月以内の場合、自分で直接応募したことによる転職は受給の対象外です。

⑤ 1年以上の勤務が見込まれていること
●用語解説
1年以上の勤務が見込まれている:雇用契約書や労働条件通知書で、雇用期間が1年以上であることが明記されているか、期間の定めのない雇用(正社員など)である必要があります。

●注意点
雇用期間が1年以下である場合は、その雇用契約が1年を超えて更新されることが確実であることの証明が必要です。

⑥ 再就職先で雇用保険に加入していること
●用語解説
雇用保険:週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される見込みがある場合に加入する保険制度です。

●注意点
必ずしも正社員である必要はなく、労働時間などの条件を満たせばパート・アルバイトでも加入できます。

⑦ 過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受給していないこと
●用語解説
常用就職支度手当:障害者や45歳以上で一定の条件を満たす求職者が常用雇用に就いた際に支給される制度です。

●注意点
過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受給していた場合、新たに再就職手当を受給することはできません。

⑧ 受給資格決定日よりも前に内定を得ていないこと
●用語解説
受給資格決定日:ハローワークで失業保険の受給手続き(求職申込)を行い、受給資格が認められた日のこと。

●注意点
再就職手当を受給するには、この日以降に就職活動を開始し、内定を得る必要があります。退職前や受給手続き前に内定をもらっていた場合は対象外です。

派遣社員・アルバイト・パートの場合

派遣社員として再就職した場合でも、再就職手当を受け取れます。ただし、勤務期間が短期である場合や、紹介予定派遣の場合は、受給要件を満たさないこともあります。派遣契約の内容や雇用期間によって取扱いが異なるため、事前にハローワークで確認しておきましょう。

また、アルバイトやパートの場合も、条件を満たせば再就職手当を受け取れます。ただし、「雇用保険の被保険者として1年以上勤務することが確実」であると判断されなければ、受給対象にならない点に注意が必要です。

再就職手当の受給金額

ここでは、受給額の計算式や具体例を紹介します。

受給額の計算式

再就職手当の受給額を計算するためには、まず基本手当日額を算出しなければなりません。基本手当日額は雇用保険受給資格者証に記載されている金額で、以下の計算式により算出可能です。

※1基本手当日額を計算する際の給付率
年齢や賃金水準に応じて、45%〜80%で設定されます。賃金が低い人ほど高い割合に、賃金が高い人ほど低い割合になるのが特徴です。

基本手当日額が確定した後、再就職手当の受給額は、以下の計算式で求められます。

※2再就職手当の受給額を計算する際の給付率
所定給付日数(※3)の残りの日数(支給残日数)によって以下のように定められています。

  • 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の場合:70%
  • 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の場合:60%

※3所定給付日数
失業手当が支給される上限の日数のことです。年齢や雇用保険の加入期間、離職理由(自己都合・会社都合など)によって異なり、最短で90日、最長で330日まで定められています。

受給金額例

基本手当日額が4,000円、所定給付日数が270日の場合で、受給金額例を試算してみましょう。

※失業手当は、待期期間の満了日の翌日から支給されます。そのため、待期期間の7日間と翌日の満了日は、支給残日数の計算には含めません。

■受給資格決定日以降50日目に再就職した場合
支給残日数228日になり、受給額は638,400円になります。
計算方法は以下のとおりです。

支給残日数:270日−(50日−8日)=228日

再就職手当の受給額:4,000円×228日×70%=638,400円

■受給資格決定日以降100日目に再就職した場合
支給残日数は178日、受給額は427,200円となります。
計算方法は以下のとおりです。

支給残日数:270日−(100日−8日)=178日

再就職手当の受給額:4,000円×178日×60%=427,200円

このように、再就職の時期が早いほど、受給額が大きくなります。

再就職手当を受給するメリット

ここでは、再就職手当を受給するメリットについて見ていきましょう。

再就職後の収入が安定する

再就職直後は生活環境の変化や転居などで支出が増えますが、初回の給与までに1ヵ月ほど期間が空くことも少なくありません。再就職手当を受け取ることで、一時的な出費や収入の空白期間を補えます。
さらに、再就職手当は所得税や住民税の課税対象とならない非課税所得として扱われます。税金が差し引かれないため、支給額をそのまま満額で受け取れるのもメリットです。

受け取って退職しても返金の必要がない

再就職手当は、支給が決定した時点で要件を満たしていれば、その後の退職理由や就業期間にかかわらず返還の対象とはなりません。
受給要件には、「1年以上働く見込みがあること」が含まれますが、これは支給決定時点での見込みを確認するものです。実際に1年間勤務することは義務づけられておらず、やむを得ない事情で早期に離職した場合でも、返還する必要はありません。

再就職手当を受給するデメリット

再就職手当には多くの利点がありますが、受給する際には注意点もあります。

失業手当の満額よりも受給額が少なくなる

再就職手当を受け取ると、その時点で失業手当の支給は終了します。そのため、失業手当をすべて受給した場合と比較すると、結果的に受け取る金額の総額が少なくなる場合があります。
再就職手当は、残っている失業手当の一部をまとめて支給する仕組みです。制度の性質上、早期に再就職した場合は失業手当の残り分を受け取れませんが、スムーズに転職先が決まっている分、給与収入を早く得られるようになります。

急いで納得のいかない再就職先を選んでしまう可能性がある

再就職手当の受給額は、就職先が早く決まるほど大きくなる仕組みになっているため、急いで再就職をした方がメリットが大きいように見えます。
しかし、勤務条件や仕事内容、人間関係などが自分に合わない職場を選べば、再び短期間で離職する可能性もあります。そのため、再就職手当の受給だけにこだわらず、将来的に安心して働ける環境かを見極めることが大切です。

再就職手当を受給するまでの流れ

再就職手当を受給するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 採用証明書・雇用保険受給資格者証・失業認定申告書をハローワークに提出する
  2. 再就職手当支給申請書をハローワークから受け取る
  3. 再就職先に書類を記入してもらう
  4. 再就職手当支給申請書・雇用保険受給資格者証・その他ハローワークの求める書類をハローワークに提出する

雇用保険受給資格者証の一部項目には再就職先の記入が必要です。なお、一部のハローワークでは、マイナンバーカードで代用できる場合もありますので、事前に確認しておくのが望ましいでしょう。

また、再就職手当支給申請書には、事業主(再就職先)が記入する欄があり、前職の会社と密接な関係がないことなどを証明してもらう必要があります。
申請期限は再就職日から原則1ヵ月以内であるため、早めの手続きを心がけましょう。

まとめ

再就職手当は、雇用保険を受給している人が早期に再就職や開業をした際に支給される制度です。再就職後の生活を安定させるための一時金として役立ちますが、支給を受けるには一定の条件を満たし、期限内に手続きを行う必要があります。

また、申請時には、再就職先の勤務形態や契約内容によって対象外となる場合もあるため、事前にハローワークで要件を確認しておくと安心です。制度の内容を正しく理解し、自分の働き方や生活設計に合った形で活用しましょう。

執筆 宮崎千聖

FPライター。神戸大学経済学部卒業後、銀行の融資課にてローンの相談・手続きを担当した。退職後はライターとして、カードローンやクレジットカード、資産運用、債務整理など幅広いジャンルで執筆している。2級FP技能士、証券外務員一種

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